商業施設運営におけるカスタマーサクセスの重要性(前編)

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商業施設の在り方が変わってくる中、CX(顧客体験)の重要性が注目されています。

しかし、この「CX(顧客体験)とは、具体的にはどのようなことを指すのか?」、またCX(顧客体験)を測る指標や、CX(顧客体験)を向上させることが、SCの未来とどうつながっていくのか」について理解できている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

今回、SCにおける「CX(顧客体験)とは何か?」「何を指標とし、どんな姿を描くべきなのか?」について、CX(顧客体験)の指標を数値化、データとして見える化することを実際の店舗や量販店でコンサルティングされている株式会社トータル・エンゲージメント・グループの池田社長に紐解いていただきます。

まずは事業内容についてお聞かせください

池田社長:

我々トータル・エンゲージメント・グループ(略:TEG)は、CX-EX(顧客-従業員体験)の「見える化」ツールの開発・提供と、組織を顧客中心に変えていく「顧客体験定着プログラム」という実践型研修プログラムの提供を行っている会社です。

インターネットやスマホが一般化してから、社会環境は大きく変化の一途をたどりました。その結果、生活する我々が日々接する情報量は爆発的に増加し、企業から生活者までの情報伝達において、従来型の一方的な広告的な考え方では到達しづらくなってきているのが現状です。よって、これからは広告偏重なコミュニケーションではなく、顧客との関係を良好にすることによって、愛用者を増やす、常連客化することが非常に大事だと考えます。

そのような中、顧客と企業の関係、従業員と企業の関係を「見える化」する重要性は高まっています。その需要を基に、

当社では2010年より顧客―従業員体験の「見える化」を行う事業をスタート、現在まで100社を超える小売流通業を中心として多くの国内企業にサービスを提供しています。

その一つに、顧客体験の「見える化」として「YourVoice」というリアルタイムフィードバックツールがあります。このツールの特徴は、お客様の体験をタイミングよくアンケート形式で依頼、それに答えていただいたものに対して即時に分析表示を行い、その結果については企業内での情報共有が素早く行え、全社的に顧客視点を体得できるツールになっています。しかし当然ながら、ツールだけではCX(顧客体験)の考え方を全社的に浸透させることは不可能です。そこで「顧客体験定着プログラム」は、自社で行う顧客調査の設計から実査、そして分析までをワークショップ形式で行い、組織内に顧客中心文化をインストールしていくものとなります。ツールとプログラムを合わせることにより、顧客体験向上による改善活動が始まり、収益貢献や採用活動にも良い結果を導き出すような設計がされています。

我々は、クライアント企業が顧客−従業員との関係を良好にした上、持続成長ができることを、これまでの経験に基づいてコンサルティングおよび顧客体験をリアルタイムでフィードバックできるように、「YourVoice」を使い、定着までの支援をさせていただく「顧客体験定着プログラム」で支援・サポートしております。

指標として貴社サービスの紹介をお願いいたします

池田社長:

CX(顧客体験)を実行する上では、いくつかの指標があります。NPS(推奨意向)、CSI(顧客満足度)、NRS(再来店意向)、CES(顧客努力スコア)などが有名ですが、多くの場面で使用でき、改善などにも向いているものがNPSになります。

シーンによってさまざまな指標を使い分けていますが、メインではNPSを用いています。

当社では、2010年以前ですとミステリーショッパー(覆面調査)事業を行っていたのですが、調査結果が現場にとっての監査にしかなっておらず、もう少し現場を勇気づける調査ができないかと課題に感じていました。ちょうどその時にNPSと出会う機会があり、本家本元でのレクチャーを受けました。米国でも2010年頃はそれまでは顧客満足度調査などが主流で、多くの環境で使われていましたが、現在では多くの企業の経営指標として使われています。

顧客満足調査はご存の通り、エンドユーザーに「〇〇は満足されましたか?」という問いに「大変満足」から「大変不満」を5段階で回答するようになっていますので、とても使いやすく、多くのシーンで現在でも使用されています。

しかし、実際のところ顧客満足調査には大きな問題があります。

「企業業績との相関が強くないこと」と、「その後の改善活動への示唆に使うことができないこと」です。

相関が強くないということは、満足度を高めても売上が上がるかどうか分からないということです。満足度はあくまでも過去の経験に対しての回答であり、将来のことを聞けないからです。

また、何に対して満足をしたのか?不満だったのか?を示せないことで、改善活動の示唆が導けず、ただの指標になってしまっていることが多いのも課題です。

それに対しNPSは、回答していただく方にとっても答えやすく、企業にとってもメリットが多いものとなります。

NPSを簡単に説明しますと、NPS®(ネットプロモータースコア)計測するためには、まずは「あなたはこの製品・サービスを、友人や知人にどの程度薦めたいと思いますか?」と質問、0〜10点で評価してもらいます。「0」は全く薦めない、「10」は大変に薦めたい、11段階で選んでいただきます。この第一設問と、「その理由をお聞かせください。」という自由回答の第二設問がNPS設問になります。その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」と分類します。

NPSは「推奨者」の割合(仮に50%)から「批判者」の割合(仮に30%)を引いた数値(50%-30%=20%)のことを指します。つまり、推奨者が増えるほど数値が高くなり、批判者が減るほど数値が高くなるように設計されています。このNPSスコアを、企業努力によって、高めていくかが重要な活動になります。

現在、海外はもとより多くの日本企業でも顧客調査時の指標としてNPSを使われることが多くなりました。

NPSのメリットは主に3つあります。

1.リアルな顧客の声が聞ける

NPSでは「あなたはこの製品・サービスを、友人や知人にどの程度すすめたいと思いますか?」というシンプルな質問と自由回答で顧客は解答します。自由回答があることで、リアルな顧客の声を聞くことができます。リアルな顧客の声は現場にも響きやすく、「自分たちはこう見えているのか」という気づきにもつながります。

また、「10−9」をつけられる方のコメントには褒め言葉の事が多く、従業員モチベーションの向上に大きく貢献します。

2.業績との相関関係がある

NPSを考案したベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、多くの業界においてNPSがトップの企業は、他の同業他社と比べて2倍の成長率を上げています。高NPSを維持できている企業は、顧客のLTVも高くなり、顧客離脱が少なく、さらには口コミでユーザーが増えていく状態になります。

3.CX(顧客体験)全体を評価できる

NPSは部署単位で行う調査ではなく、ひとつのサービスや製品全体の顧客体験すべてに対する評価を測ることができます。先述のように、調査のための調査ではなく、顧客体験を向上する活動をする上では、部署の垣根を超えて顧客視点での改善が必要になります。NPSを日常的に利用できるようになると、社内での「褒める文化」が浸透しやすく、社風も変わるという効果もあるのです。

当社では、このNPSを主指標としたリアルタイムフィードバックシステム「YourVoice」を用いて、「お客さまの声」を活かす活動を行っています。

また、NPSは調査しているだけは、顧客体験の向上にはありません。数値をみながら改善活動を行うことがとても重要になります。そこで当社では、「顧客体験定着プログラム」として調査設計+調査+報告+改善活動をワークショップ形式で提供しております。これはプロの知見を自社案件を用いながらインストールするものとなります。

「見える化」は非常に大事ですが、「見える化」されたものを活かし、収益につなげる動きまでを提供しています。

次回は
具体的にはどうしたらよいのか?
CXをあげることで見えてくる効果 についてご説明頂きます。お楽しみに!

後編はコチラ