特別企画 「SCのアプリ戦略 ハウス型ペイメントの活用」について

対談・インタビュー

商業施設でのアプリ活用について、施設の担当者へインタビューをさせていただき、効果や課題点、これからの展望をお伺いする特別企画。

第一弾は渋谷スクランブルスクエアの松崎様に渋谷スクランブルスクエアアプリについてお伺いいたしました。

Q1.  

施設の特徴と事業領域について教えてください。

東急東横線渋谷駅地上駅舎跡地に2019年に誕生した「渋谷スクランブルスクエア」は地上47階、地下7階、高さ約230mの大規模複合施設で、地下2階から14階が商業施設、15階が共創施設「SHIBUYA QWS」、17階から45階がオフィス、14階と45階から屋上が展望施設「SHIBUYA SKY」となっています。東急・JR東日本・東京メトロの3社共同の開発により誕生した施設で、商業施設については心が躍り心に響く旬感を体験できる「世界最旬宣言」をビジョンとしています。日本初上陸ブランドなど多彩なテナント200店舗以上が揃い、開業した際には4日間で31万人が来館するなど渋谷の新たなランドマークとしてご利用いただいています。

営業二部デジタルマーケティングDiv.では、主に「渋谷スクランブルスクエアアプリ」を中心とした業務を担っており、アプリの日々の運用に加え、アプリを活用したマーケティング等を行っています。

Q2.  

汎用型のペイメントサービスが普及する中で、SCとしてハウス型ペイントの導入の先駆け的存在かと思います。ハウス型ペイント導入に至った経緯を教えてください。 

開業の際に、二つの目標がありました。

一つ目は顧客戦略の構築、二つ目はマーケティングデータの活用です。

当然ハウスカードを作るという案もありましたが、鉄道3社が共同開発した施設で、その各社が独自のカードを持っているという背景もあり、どれか一つを選択することも難しく、当初の目標を解決できる方法はないかと模索していたところ、「.pay(ドットペイ)」のご提案を頂きました。

当時は様々なペイメントが広く普及しはじめ、アプリを使ったポイントカードや販促施策の展開などが一般的になり始めた時期という背景もあり、「.pay」はアプリ内で決済が出来、かつポイントの付与、クーポンの配信などSCにとって必要な機能が備わっており、導入へ至ったという経緯です。

Q3.  

アプリの運用の現在の体制を教えてください。

社内では4名でアプリの運営・企画を行っています。

私どもはアプリ全体の統括と企画を練る部分を担っています。日々のクーポン配信業務などの実務すべてを我々ですべて行うことが難しい部分もありますので、「シ28(ブヤ)の日」のクーポン配信や、お誕生日月の方へのクーポン配信などは協力会社へ業務を委託しています。また、アプリの技術的な改修についても、改修企画は私どもにて行いますが、改修の実務についてはアプリベンダーへ委託しています。

Q4.  

「.pay」を導入して、変化したことや実感する効果はありますか? 

開業から導入しているので使っていなかった場合との比較はできませんが、アプリを使って決済いただいている方の方が購買単価が若干高い傾向にあります。

特に毎月28日には「シ28(ブヤ)の日」と題して、4,280円以上で使える1,000円クーポンを配信しておりますので、ある程度まとまったお買い物をしていただき、クーポンをお得にご利用いただいているのかなと思います。

また、アプリでは物販で3%、食品で1%のポイントが付き、他のポイント付与率と比べても高い還元率なので、そういった点もご利用いただける要因になっていると思っています。

アプリのダウンロード数は累計10万程度(2022年1月現在)で、会員登録をして、クレジットカードをご登録いただいている会員様が4万人程います。

このクレジットカードの登録まで完了すると、アプリでの決済やポイント、クーポン利用が出来るようになりますが、提携カードの種類も限られていることや、登録までにセキュリティー面で入力いただく項目があるなどハードルがあり、登録まで至らないケースが多い点については大きな課題であると認識しています。

2020年の11月に三井住友カードをはじめ提携できるカードを増やしましたが、今後もさらに拡充していきたいと考えていますし、引き続きアプリ自体のユーザビリティも上げていきたいと考えています。

Q5.

「.pay」のテナント様の活用状況や、有効的な活用はありますか?

「シ28(ブヤ)の日」に合わせて4,280円プランを用意いただくなど、ご協力いただいているテナント様もいます。例えば普段は4,280円以上のものをこの日は特別に4,280円にしていただいたり、商品を組み合わせてお客様にご提案いただくなどの事例があります。

またテナント様独自でもクーポンを配信頂くこともできます。クーポンの内容はサンプルプレゼントなど様々ですが、先日実施したお正月企画でお年玉クーポンを各テナント様から配信頂くようお願いしたところ、60店舗ほどご参加頂きました。

これまでクーポン配信を躊躇うこともあったテナント様も、アプリでクーポン配信を実際に行っていただくことで、今後販促としての取り組みがより抵抗感なく実施できるようになっていくことを期待しています。

一方で、アプリで得られた購買動向などのデータ活用というところに関してはまだ道半ばだと考えており、現在、BIツールを活用してデータの可視化をし、利用動向の分析を進めています。

これをテナント様へもテナントカルテという形で情報共有し、テナント様とのコミュニケーションや、リーシングの場面でも活かしていきたいと考えています。

Q6.

「.pay」のようにお客様に最も響いたと思うDX施策はありますか? または試みている施策や「.pay」自体のさらなる発展計画などあれば教えてください。 

先にお話しさせていただいた提携カードの拡大等、アプリの利便性を向上させ、より多くのお客様にアプリをご利用いただける基盤整備に引き続き取り組むとともに、顧客戦略をより強化していきたいと考えています。

例えばステージ制度の導入により、ロイヤルカスタマー戦略を強化していきたいと考えていますし、顧客情報を活用してお客様により付加価値の高いサービスを提供する、というようなことも検討しています。

また、アプリの特性を活かした新たなサービスの提供などにも取り組んでいきたいと考えています。

本アプリは決済機能を持っていますので、PCやタブレットが別にあれば、オンライン接客により、お客様のお手持ちのスマートフォンで自宅にいながら商品をアプリで購入することが可能で、すでにいくつかの店舗でご利用いただいています。

しかし、オンライン接客の予約システムなどが整備されていないこともあり、浸透できていないのが現状です。こうした新たなお買い物の仕方を提供するのも、商業施設側が提供すべき付加価値のひとつではないか、と思っています。

今後も様々なトライを重ね、アプリを日々進化させていきたいと思っています。