第一回 これからのSC座談会

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テーマ2:~10年後のSCについて~

茂見:

人口が減少していく中で、商業へのニーズが変わってきていると思います。

皆様は10年後のSCや商業に対してどういったお考えがありますか?

磯部(T):

弊社は、「たくさんのものがありすぎて選べない」といった方に、ピッタリの商品をお届けしています。

自身の買い物の消費行動もそうですが、たくさんは要らなくなってきていて、自分に合った良いものがひとつあれば良い、そんな感覚になってきたなと思っています。

ポイントは「高額品」が売れていくのではないかなと考えています。

茂見:

わかります。オンラインだとポチッと買えるけど、リアル店舗だとその高額商品がまずは見れる、触れるという感じですかね。

松藤様はいかがですか?

松藤(SC):

人口減については、マクロ的視点だと確かにそうですが、ミクロ的視点では違った見方があるかもしれません。

局所的には、スマートシティ、コンパクトシティの話でいうところの、都心部って人が増えていく現象があるのかとも思います。

そういった中でSCはその中心に位置するべき存在で、人の集まる場で継続してあるべきです。

これからの世の中、働き方も自由になるのであれば、色々なところでの雇用の形態があって良いと思うし、そういう場所に「住と働く場所と、娯楽を楽しめる場所」になっていく世界が来るのだとしたら、ますますSCへの需要は高まっていくのではないでしょうか。

石神(SC):

テナント様には「集客」を求められているので、恐らく10年後も、どうやって集客するっていうのはずっと考えないといけないと思っています。

難しいことではなくて、シンプルに出店するテナント様やスタッフ様が顧客に対して「それって面白い」とか「楽しい」とか「嬉しい」とか、そういったことを感じるかどうかしかないと考えています。

こんな施策やりますとなった時に、テナント様にとっては、そんな面倒くさいことをして売れるんですか?っていうことは、よくあるなと思います。

それが当然だとも思うし、何かボタン1つで、コミュニケーション取れるからありがたいとか、シンプルに効率が上がって売上が上がるというところにしか「解」がないです。

もう一つは、そもそもSC運営の人材自体を底上げしないと厳しいと感じています。

新人社員が入ってきた時に、ショッピングセンター事業がどういうものかを勉強させますが、そもそも理解した方が良いのは、テナント様がどのぐらい大変かということだと思います。まずは販売員した方がいいのではないか、と個人的に思います。

あとは物事を本多面的に捉える力や、本質を理解する力はこれからも大事ですよね。テナント様や働くスタッフ様は生きるか死ぬかの最先端で戦っているのに、我々は不動産賃貸業っていうギャップを埋め、組織自体も変わっていく必要があると思います。

茂見:

デベロッパー様からそういった意見が伺えるのは非常に新鮮です。

デベロッパー様とテナント様とのコミュニケーションをサービス視点から見た時に、また今後の10年を見据えて変化してきているのかなと思っています。

加柴(T):

そうですね、私は開発担当ですので、SCの営業担当の方とコミュニケーションを取ることが多いのですが、オープン後はテナントのエリアマネージャーとSCのフロア担当がやり取りをした方がより活性化しやすいかなと思います。

有吉(E):

我々は今、従業員管理のアプリ化を行っており、デベロッパー様とテナント様の本部をつなぐコミュニケーションツールとして活用出来ればと考えています。これまでは会社対会社、デベ対テナントでしたが、これからの10年は「個対個でのコミュニケーション」が実現できる環境づくりが重要だと思っています。

茂見:

磯部様は、現在デベロッパー様とのコミュニケーションはどう捉えていますか?

磯部(T):

私が直接お話する機会は多くないですが、デベロッパーの方から「今年の福袋は何個ですか」と3ヶ月前くらいに言ってもらえて、事前に準備ができたので非常に助かったということがありました。(笑)

今後の理想で考えると、コミュニケーションツールを全て統一にして欲しいですね。デベロッパー様によってツールが違うので、色々なツールを見に行かなきゃいけないのはかなり手間ではありますね。

加柴(T):

話は少し変わりますが、コミュニケーションの側面で私は、出店までの書類関係がどうにかならないかなぁと思います。毎回書くことは似ているので、全国のSCで何か共通のフォーマットがあったらとても助かります。

茂見:

10年後を見据えて、どういうアクションがデベロッパー様から必要だと思いますか?

石神(SC):

我儘というか、ご要望をもっと言っていただいた方が良いんじゃないかと思います。商品並べたら売れる時代の延長ラインにまだいるところもありますので、何が刺さるのかをテナント様は理解されているとおもうので、無駄なら、無駄だとか、これ面白いと思いますよとか。

松藤(SC):

施設一体となったキャンペーンやりましょうとか、新しい販促ツール使いましょうという話が出るかと思いますが、テナントさん視点で期待するところってどういうものですか。

加柴(T):

販促担当も少人数でやっているので、基本的にはもっと「簡易的な流れ」で出来ることを期待しています。

磯部(T):

資材系などもデベロッパー様側で組み立てて提供いただけるとすごく助かりますね。

石神(SC):

天王寺ミオは、「デザイナーズラボ」といって、ホームページ更新してくれるところに、商品をおくると全部撮影してくれます。

お店の中の店頭POPも全部作ってくれます。D2Cの企業様は定量的なデータ分析だけでなく、定性データも電話でライフスタイル聞いたり、訪問したりしているって聞いたのですが、売り場以外でそういう場面はありますか?

磯部(T):

お客様座談会を頻繁に開催しています。継続してくださっているお客様から商品開発のご意見をいただいたり、インタビューをさせていただいたり。先日もちょうどオンラインでやりました。

石神(SC):

リアルの定性データっていうのは最終的に大事だから続けられているってことでしょうか?

磯部(T):

会社のバリューの中に「きゃーっ♡にかける」というものがあって、お客様がときめく体験を提供できているか、を大事にしています。

例えば、届いたシャンプーの箱を開けたときに、自分が選んだ香りがふわっと香るようにカードに香りを吹き付けて同封したりしています。

シャンプーそのものを売っているのではなく、使い心地をマイページからフィードバックすることで来月はさらに自分に合った処方で届いたりだとか、髪の悩みが発生した時に電話やLINEで相談すると、スタイリストからアドバイスがもらえるなど、サポートすることをサービスとして提供しています。

店舗も、体験価値を高めるために時間もお金もコストもかけていて、どういう体験を構築したらお客様にときめきを届けられるかということを考えて作っています。

茂見:すごく顧客を見ていますね。リンツさんもチョコレートを売っている中での、購買の体験や楽しみを大事にされているということで、売るもの・売り方は違っても見ているところは同じなのだなと感じました。

10年後も大事なことは「シンプルにお客様の喜ぶ体験」を提供すること。そのために考え抜く力や、マーケティング、業務効率化などを、デジタルを用いることでよりわかりやすくなったり、活性化したりしていくのではないかと思います。

今回ご参加いただきました皆様、各々言える範囲と言えないこと等があったかと思いますが、 立場がある中でのお話し、また個人的な見解含め様々なご意見をいただき誠にありがとうございました。

今後も活発な意見交換ができるような運営方法を検討しながら開催していきたいと思います。

※登壇者様のプロフィールは次のページにてご参照ください。

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