キーパーソン対談 SCのミライ 百貨店におけるオンラインとオフラインのシームレス化

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時代が大きな転換期を迎えている今、SC・百貨店はどのような未来を目指そうとしているのでしょうか。このシリーズでは、SC・百貨店業界のキーパーソンをゲストに迎え、その想いやビジョンを伺っていきます。

株式会社三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタルサービス運営部部長  升森 一宏氏(以下、升森氏)と、株式会社イースト エグゼクティブマネージャー 有吉 利夫(以下、有吉)による対談をお届けいたします。

ゲスト: 株式会社三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタルサービス運営部部長  升森 一宏氏
ファシリテーター:株式会社イースト エグゼクティブマネージャー 有吉 利夫


有吉  本日は当社の運営するSCネットワークの対談にご出演頂きまして、誠にありがとうございます。 当メディアは、主に全国のSCまた百貨店など商業に関わる方々に閲覧いただいております。

まずは升森さんの携わる業務について教えていただけますか?

升森氏 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタルサービス運営部に所属しています。この部署は、MDを司る統括部で、デジタル関連施策・サービスを専門にしている部隊です。店頭とオンラインをつなぐ架け橋として「総勢約50名」のメンバーで運営し、半分のメンバーは現場サポートチームとして、「アプリ」や「伝票電子化」「LINE WORKS」の導入から運用の支援を中心業務として店舗のサポートを行っています。

残りの半分が企画チームとして、「三越伊勢丹リモートショッピングアプリチーム」、「三越伊勢丹アプリチーム」、「サービスチーム」の3つのサービスについての計画・企画を行うチームに加えてUXUIデザインを行うチームを抱えています。

メンバーは、システム出身、現場がわかる売り場出身の混合メンバーで構成しています。売り場出身のメンバーは、デジタルリテラシーの高い比較的若い世代のメンバーで、かつ、百貨店自体が社会背景やお客さまの変化に合わせて変わらなければならない課題感を持っているので、アイデアを出しながら、売り場に入り込んでいくという形を取っています。

貴社の部署はどのような事をされているのですか?

有吉   ありがとうございます。 私の業務もご紹介させていただきますと「ビジネスデベロップメント本部」に所属しており、日々、事業開発や新サービス開発運用に携わっております。

私のチームでは、大きく「OMO/DX事業」「コンサル事業」「SCネットワーク事業(メディア)」「越境EC事業」の4つとなっております。

本日は、特にOMOに関わる御社のサービス「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」に関して深くお話しを伺えればと思いますが、OMOの実働部署に至るまでの升森さんご自身の経歴や経緯をお聞かせください。

升森氏 98年に伊勢丹に入社し、食品を約10年担当しておりました。その後外部出向を経たのちスタッフ職に従事しておりました。3年前に新宿店を巨大なEC倉庫に見立てオンラインを推進するというアイデアを提案したところ、組織として一元的に実行するためのシームレスプロジェクトが立ち上がりました。

ECにただ商品を掲載するだけでは意味がないので、サイト全体のリニューアル検討や、当時はオンラインサイトと三越伊勢丹アプリが連動していなかったため、具体的連動に向けた改修を考えてきました。

20年6月に「三越伊勢丹オンラインストア」と「三越伊勢丹アプリ」 をリニューアルし、改善を繰り返しながら進めてきました。
また、緊急事態宣言中にコロナ禍によりランドセル商戦が影響を受けた際、ZOOMを使ってランドセルのオンライン接客をしてみようと試験的な運用を経て自前の実装を検討、 約3ヶ月で「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を立上げました。

有吉  「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」は、私も利用させていただいているのですが「開発からローンチまで 3ヶ月でリリース」されたという「スピード感」に驚きました。

やはり大きい企業さまの中で、そのスピード感で対応するのはものすごくパワーが必要だったのではと思います。 私自身、新しいことを始める機会が多く、ゼロからイチを作り出す大変さを日々感じますので、敬服致します。

この「スピード感」を実現させた秘訣などはありますでしょうか?

升森氏 コロナの影響もあり、安心安全のためにリモートでショッピングできる仕組みができるといいよねという点で、特に反対の声はありませんでした。既存の運用フロー上のサービス改修だと、関わるメンバー・関係者が増えるので、障壁はかなり出てきますが、「新規のサービス」を立ち上げる際にはメンバー・関係者も少なかったので、スムーズにリリースすることができました。

有吉  仰る通り、「新規のサービス」を動かす際、このコロナ禍はすごく「スピード」を変えましたね。

これまでと違う動きが発生すると、どうしてもネガティブな側面が強くなりがちですが、「いつかやろう」が3年~5年分は早く進みだしたのではないかと感じます。 「新しいもの」の中では「DX」といったワードが話に多く出ますが、企業視点でのDXを「収支」という軸で考えると、ウェイトは「支出を抑える部分」だと感じています 。

升森氏 コロナ禍は、百貨店としては大きな影響を受けましたが、DXという観点だけで言うと、本当にDXが会社の業績を押し上げる状態になった時に 、このタイミングは将来振り返った際に「重要な時期だったね」と言えると思います。

有吉  去年の4月に緊急事態宣言が出た際に全国のSCや百貨店の皆さまから、他社はどうしてるか?といったことをよく聞かれました。

そこで立上げたばかりのSCネットワークで、オンライン情報共有会をさせて頂き、全国のSC関係者さまを集って現状共有から今後の見通し、またテナントさまに対する賃料減免の交渉はどうするか?などといった具体的なところまでお話をさせていただいた経緯があります。  

その後、商業施設のDX動向やコロナ対策におけるデジタルサービスの紹介など、継続して情報共有会を行っているのですが、世の中の変化というと「チャネルホッパー」が当たり前の時代になり「可処分所得→可処分時間→そして今可処分接点をいかにつくるか?」など、いかにエンドユーザーとつながるかが重要になっていると感じます。

そういった中でリアルの場を持つ御社のような百貨店業や商業施設というのは、他の業界から比べたら今後必ず有利に働くと私は考えています。

強みであるリアルの場と人の力を活かす

有吉 それでは本題の御社が提供している「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」の特徴・性能を教えてください。

升森氏 10年前は伊勢丹新宿店での買い物体験は、最先端のファッションや驚きがあり、店頭に商品を並べておけば良い時代でした。そこには、プロダクトアウト志向で、カスタマージャーニーの視点はあまりありませんでした。今はお客さま自身がたくさんの情報を調べられるなか、オンライン上の「顧客接点」を広げ、お客さまの購買行動の選択肢を広げることが大事になってきました。サイト、アプリ、そのほかのデジタルツール(例えばLINE WORKSなど)を使ってまずは接点を広げ、それをフィールドとして、お客さまが回遊しやすいように、オンラインとオフラインをスムーズに行き来できる状態を作り、お客さまがストレスなく購買体験ができるようにしていくことがシームレス化の目指しているところです。

それがスムーズに出来る状態になればお客さまから選んでいただけますし、接点を持った上であとは、お客さまがオンラインでお買い物体験をされるのか、オンラインで繋がった上で店舗に来てお買い物されるのか、若しくは新しいチャネルであるシームレスの世界で、リモートショッピングアプリなどのオンラインでもなくオフラインでもないチャネルを使うのかはお客さまに選んでいただけます。

サイトやアプリを作りましたが、それ自体が目的ではなく、その世界で後発者として戦おうと思っても難しいことはすごく感じています。やはり、リアルの場をいかに生かしていくか、「我々の強みである、場と人の力」を活かしていきたいと考えています。

その1つが新しい販売チャネルでありサービスの「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」です。これはチャットや写真を使ってお客さまとやり取りしますが、そのやり取りは店頭にいる販売員が行います。販売員が商品の提案をして、お客さまが「いいね」となる、今までも LINE WORKS やZOOMでそこまではできていたのですが、決済となると電話での対応となってしまい、お客さまにとってとても不便でした。それが今回個品登録という機能により、EC掲載がなく、店頭でしか取り扱いのない商品含め、アプリ内で決済可能となり、使いやすくなりました。これはまさに、人の力を使ったオンライン接客を通じた新しい顧客体験の創出が可能となり、我々としては今一生懸命取り組んでいるところです。

有吉  ありがとうございます。 お客さま視点で作られた経緯がよくわかりました。 多くのアプリは開発して終わりのサービスや、開発者側や発信者側の想いが強くなり、機能過多でわかりづらくなってしまうケースが非常に多いですね。

どうしたら利用していただけるか?継続して使っていただくには?といった視点が欠けてしまうことはアプリに限らないと思っています。

当社でもイベントとしてSCでライブコマースを実施させて頂き、初回実施で視聴者数約2万人(実施期間中の総計)と好評ではあったのですが、継続して行う場合に視点をどこに置くかが重要だと改めて感じました。

御社の場合、ベースが小売業なのでお客さま視点が強く、デジタルとの付き合い方は非常に参考になります。

升森 百貨店の強みは「リアルな場や人の力」だと思っています。

それをECに寄せていくだけでは何も強みを生かせないというジレンマがあります。また、ECでは例えば伊勢丹新宿店の場合、取り扱い商品の約1割しか載せられておらず、残りの約9割は店頭にはありますが、オンラインでは販売はできません。それを今回の個品登録により9割の店頭商品の購入も可能となります(※一部の除外品・サービス等を除く)。

よく言われる「クリック&コレクト」もECサイトの方では現在検討中ですが、リモートショッピングアプリを使えば運用で対応可能になります。お客さまへの接客の中で「この商品欲しいです」となれば取り置きもできますし、決済まで完了させ、お客さまのタイミングで、店頭引き取りに来ていただくことも可能となります。そうすればシステム改修をせずとも対応が可能になります。

過去にいろいろなシステムを作ってきた中で、時代の流れとともに使われないものや、そもそも使われなかったものも結構多いので、本当に使われるかどうかを現場含めて開発運用し、効果検証含めて必要性を考えてからシステムを作ることが大事です。デジタルはツールでしかなく、「人が何をやりたい」をかなえる手段でしかないのです。

有吉  当社では、不動産賃貸業や鉄道業のSC運営をサポートする機会も多いのですが、「その場に人を集める」ことや「人に伝える」といったこれまでの機能から、テナントさま寄りの「物を売る」といった視点に移行しつつあります。

しかし、結局はお客さまに対して「何を実現するか」といった点で大きな違いはなく、手段が変わるだけです。

また、まずは小さくでも始めてみる、ということも新たなものを生み出す上では大事だなと最近は思うようになりました。 はじめから、アレもコレもと色々な機能をつけてしまうとスピードがあがりません。

仰られるように本当に使われるためには、どうするべきかの方向性を決め、そこの軸からブレることなく、どこまでシンプルに始められるかを考えていきたいです。

升森氏 誰のために何をやりたいのかを突き詰めて考えて、まずは運用で小さく始めてみて成功したら次のフェーズに行くことを大事にしています。

お客さまも販売員も手軽にシンプルに使えることを大事に

有吉 「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」のアプリ評価が3.8(注:取材時6月時点)はすごいなと思いましたが、実際のお客さまのご利用状況や機能について教えていただけますか?

升森氏 リモートショッピングアプリのダウンロード数は現在16,000件以上です。接客数は6月末までの実績で約6,000件です。 まずはチャットから始まるのですが、接客のうち9割がチャットで完結し、残り1割がビデオ接客となっています。チャットで気軽に質問いただき、そこで完結してしまう場合がほとんどですが、そこからさらにビデオ接客となるとより細かいディティールですとか素材感、コーディネートの提案などトータルで接客いたします。

有吉  ECで高額商品を買うのはまだまだ日本の文化的にも抵抗感があったり、勇気が必要だったりしますよね。

リモートショッピングアプリがあれば、外出しづらい今の環境下にビデオ接客でしっかりと商品の特徴や疑問に応えてもらえるのは必要な機能の一つだと思います。

升森氏 スタート当初は、ビデオ接客の割合が半分と想定していたのですが、実際はチャットと写真のやりとりで9割のお客さまにご満足頂けていることがわかりました。一方でやっぱり価格の高いものや本当にこだわっている商品はビデオ接客をさせていただくと、お客さまの迷いも解消し、購入まで至るケースも多いです。

またアプリでは、ログイン後、ショップの登録、ショップチャット開始 の3段階目まで進んだお客さまの約4割が実際に商品をお買い求めいただいています。
通常のオンラインストアと異なる部分は、コーディネート提案を行うだけでなく、通常のECでは選択できないプレゼントのラッピング種類も、アプリを活用したオンライン接客だと、母の日用の限定のボックスやメンズ館限定のネイビーのボックスなども選択可能となります。三越伊勢丹で購入したという事実をすごく大切にされているお客さまもいらっしゃるので、上記の細かいサービスについてもご好評いただいています。ECでは提供しきれない細かいサービスまで、リモートショッピングアプリでは提供できるというのもお客さまにとってもメリットの一つです。

また、ビジネスの側面では、店頭を歩いていらっしゃるお客さまに買う意思があるかどうかはわからないですが、アプリでコンタクトを取られるお客さまは基本的に買う意思がある方がほとんどですし、お客さまからニーズを語っていただけます。購入に至らなかった場合でもデータとしてコミュニケーション履歴を蓄積し、接客後にアプリ上でお礼をする、というコミュニケーションも可能となるのでお客さまとの関係性も築きやすいところもこのアプリのメリットです。

有吉  まさに「顧客接点」「可処分接点」の確立事例でしょうか。

「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を利用していて、コミュニケーションアプリの一面が大きいので、CtoCサービスのメルカリのような要素もあり非常に使いやすいです。

升森氏 お客さまのカートに商品を追加する個品登録機能は、メルカリのようなUXを参考にしています。お客さまも販売員も手軽にシンプルに使えることを大事にしています。

個品登録も販売員が登録する際に、約3分で登録可能なシンプルなつくりになっており、初めてプロトタイプを見たときに、「これは簡単だから現場でも使ってもらえる」と感じました。

実際に、現場の人々に見てもらうと使いやすさに関してとても良い反応でした。
一方でお客さまからのチャットをどの程度いただくかの“量”の想定が難しく、スムーズに対応できるのか不安がありましたので、アプリ自体は11月頭にソフトローンチを行い、運用が大丈夫かを確認できた後、11月25日(水) に本格リリースを行いました。

有吉  確かにシステムが完成していてもオペレーションが追い付かないといったケースはよく聞きます。

実際に対象となるショップ数や、運用している現場の販売員の方の反応はいかがでしょうか?

升森 今では 55ショップぐらいになっていますが、初めは10ショップくらいから始めました。お客さまのニーズや、現場オペレーション体制が取れている売り場をピックアップしています。

新しいことを始めるときにチームのメンバー にも常々伝えているのですが、「嫌だ」と言っている人に「やろうよ」といってもなかなか進めるのは難しいので、「興味を示してくれる人や、やりたいと思ってくれている人と始める」ようにしています。その方が早いですし、成果につながりやすいと考えています。そこで成功すると「良いんだ」と思ってやってくれるようになります。11月下旬のリリース後、一気にダウンロード者数も増え、その後2月に 2回目の緊急事態宣言が発令され、30ショップくらいまで増やしました。そこからも徐々にショップを増やし5月の緊急事態宣言に至ります。
そのタイミングで、お客さまへリモートショッピングアプリに関するお知らせを、「三越伊勢丹アプリ」や売り場が運営しているSNSで始めました。

現場が使いたいと思える仕組みを提供する

有吉  私たちの世代が、これからの20代を引っ張っていくことが大事だと思っているのですが、新しいことを遂行し実現するにあたり、パッションや数字、コアの部分で何を日々考えられているか、また御社グループで課題となっていることから今後向かうべき方向性などをお聞かせいただけますでしょうか。

升森氏 いまの取り組みは売上観点で言えばまだまだ発展途上ですが、もう1つの目的である、「お客さまと繋がる」部分では顧客情報が資産として蓄積され、長い目で見た時に、次のステップに活かせる財産になると思っています。

その反面、現状では現場が通常の売り場業務に加え、負荷が高くなると感じてしまうのも事実です。いままでは売り場でお客さまを待っていた人たちが、デジタル上での接客に踏み出すのには勇気がいります。ですので、「どう腹落ちしてもらう」のかが、今後この取り組み自体を進める上での課題だと思っています。例えば、オンライン接客業務をどのように評価につなげるのか等整理しきれていない部分をクリアにしていく必要があります。

現場の負荷を軽減する具体例では、リモートショッピングアプリではアプリログイン後のアンケートは、途中から入れた機能になります。
チャットの開始率を上げたり、お客さまとのやり取りを少しでもシステムとしてサポートしたいとの思いから始めましたが、このアンケートを入れた結果チャット開始率は格段に上がりました。


私たちはデジタル領域の仕事を主にやっているので、デジタル化することは当たり前だという価値観で話してしまうのですが、現場では通常の売り場業務があるので、デジタル化することは業務の追加でしかない状態です。このギャップがあるということを認識した上で、必ず会話をするように心がけています。それは変えようとする側が1歩引いて進めないと進まないのでチームのメンバー にもそこを心掛けるように話しています。

有吉  当社もテナント事業を行っているのですごくわかります。 店頭に立つ人は自分の店舗を運営することで一杯いっぱいです。

仰っていただいた、「評価や業務配分」についても、今やりだしたばかりのことに対して収支が追い付いてくるのは時間がかかるので、長期的な視点で見る必要があります。

少し話が逸れますが、不動産賃貸業のSCでの場合、テナントさまの為のECにおいては、仮にオンラインで売れなくてもそれを見たお客さまがリアルな店舗(オフライン)に来店してくれれば良く、そういった動きが把握できることやシームレスで接客を行った際の販売員の評価に繋がると良いなと思います。

升森氏 本当に「現場の方々が使いたい、使って良かったと思ってもらえるオンラインの取り組み」がいいと思っています。

スタイリスト(注:売り場販売員の意)の力を引き出せるような仕組みとして、三越伊勢丹オンラインストアではスタッフスタートというシステムを活用した着こなしの提案などを行うスナップ機能始めました。これは社内公募で希望した現場のスタイリストたちが商品をコーディネートし、ECサイト上でスナップ写真を上げて商品提案を行うものです。そこからお客さまは商品をオンラインで購入することができます。

今後リモートショッピングアプリではオペレーションと組み合わせることで様々なサービスを展開することができると考えています。例えば、大型家具などはスペースがなくて店内に全部置くことは難しいですが、インテリアショップと連携して、伊勢丹新宿店のお客さまがそのショールームに行って商品を購入する際に、決済をリモートショッピングアプリで行うなどの、他企業連携も含め考えていきたいと思います。リモートショッピングアプリでお客さまと繋がることによる売上に加え、将来的には「様々な企業との連携による新たな収益に繋がる仕組み」も目指していければいいなと思っています。

有吉 御社において様々な開発案件の中で、スピード感を実現する要因の一つとして、アプリ構築を他社に任せるのではなく、グループ会社のIM Digital Lab(アイムデジタルラボ)が担っていることがあげられますでしょうか?

升森氏 そうですね。

内製化のスピードを上げるためにグループ会社のIM Digital Labで制作しています。毎週金曜日には20人くらい集まってオンラインの 定例会議を行い、それ以外にも2日に1度くらいは色々な案件でミーティングをしています。毎週月曜日にシステム担当役員が入って意思決定をするということを繰り返しており、現場とエンジニアが日々会話をしているので、最短で2週間程度でのシステム開発が可能となります。

有吉 このプラットフォームやシステム自体、他の企業にも流用することが出来、非常に需要も高いのではないかと思うのですが、今後、他社さまへ展開する可能性なども考えられているのでしょうか?

升森氏 システムだけを販売しても、とは思っているので例えば使い方やデータ活用のノウハウの提供を含めたコンサルティングとパッケージでの展開などは将来的な構想として議論しています。

リモートショッピングアプリでは店頭の良さを活かしながら他社との差別化もできる仕組みが構築できたと思っています。これを育てながら5年後10年後ぐらいに新しいビジネスモデルにできるようになるといいなと思っています。


有吉  どこまで今の「顧客接点」「可処分接点」がビジネスとして大きくなるか非常に楽しみにしています。

本日はありがとうございました。

インタビューゲスト:  株式会社三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタルサービス運営部 部長 升森 一宏 氏
ファシリテーター :株式会社イースト エグゼクティブマネージャー有吉  
SCネットワーク 企画管理・
撮影 :株式会社イースト 池田
             編集: 株式会社イースト 安藤