【キーパーソン対談】SCのミライ ~森ビル株式会社 執行役員 荒川信雄氏 × 株式会社イースト 代表取締役 長島秀晃氏
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競合ではなく補完しあう街
有吉 街にどんなものが求められているかというのは、皆さんのコミュニケーションの中から生まれてくるのでしょうか。
荒川氏 社内のブレーンストーミングの他にも、顧客様へのグループインタビューなどを通じて、カード会員のお客さまともしっかりコンタクトする機会を設けています。
また、お住まいの方々であったり、あるいはオフィスワーカーのフットサルイベントがあったら我々も参加して、「お昼ご飯はどこで食べるんですか?」「どんなお弁当が人気ですか?」とか聞いています。
長島氏 常にお客さまに耳を傾けていらっしゃるんですね。
荒川氏 「六本木ヒルズ」のワーカーには、アークヒルズ・虎ノ門ヒルズエリアの食のゾーンをご提案する。原宿表参道エリアの方々には、六本木ヒルズのアート・シネマも含めて提案するなど、ヒルズを存分に楽しんでもらえることを意識しています。
長島氏 なるほど。競合するのではなく補完しあうと。
その意味ではヒルズのデータというのは大変貴重ですね。
荒川氏 ええ、そうですね。
長島氏 私は地域開発の話をする際に、よく「六本木ヒルズ」の話をするんです。昔の六本木っていわゆる夜の街で、昼間にファッションを買いに来るような街ではなかった。それが「六本木ヒルズ」ができて人々の消費行動が変わり、街が変わっていった。
だから地域開発で大切なのは、まずライフスタイルを提案するということだと思います。
有吉 イーストでも地域共生や地域開発の取り組みを始めました。
長島氏 一例として、最近、熊本県の山鹿市にワイナリーをつくりました。最初は名産を活かしたお土産開発という依頼だったのですが、何もない栗畑に素敵な空間をつくれば人がたくさん来るのではないかと考えた。
本当は運営まで手がけたかったのですが、まずはハードづくりということで実績はできたかなと思っています。
東京に足りないものを創る
有吉 今後の展望についてはいかがですか。
荒川氏 「森記念財団」では世界の都市の研究を行っており、東京という都市に足りないもの、必要なものが明確になっています。
未来を考える上で森ビルとしては、やはり東京をより魅力ある都市にしていくために都市づくりをしています。
例えば、現在進めている「虎ノ門・麻布台プロジェクト」では「グリーン」と「ウェルネス」をテーマに掲げていますが、それについて店舗も取り組んでいきたい。リテールの考え方は、大きく変わると確信しています。
長島氏 素晴らしいですね!
有吉 深化や進化の中から、新しい価値を創造していこうということですね。
長島氏 その価値の提供の仕方も、これから変わっていくことでしょう。
今のお話でも、普通なら店舗にする場所を、あえて緑のスペースにする。そうするとリアルの店舗に対するロイヤリティも必ず上がる。
新しい価値の提供で、そうした新しいロイヤリティづくりができるかもしれません。
荒川氏 我々デベロッパーとしては、長島さんの会社のような皆さんに、そういうソリューションを期待したいですね。
長島さんにお願いしたいことのひとつとして『ES(エンターテイメント型ソリューション)』です。従業員満足度としてのESだけでなく、こういった考え方もあっていいと思っています。
長島氏 ありがとうございます。ぜひご期待に応えたいと思います。
【 GUEST 】
荒川 信雄(あらかわ のぶお) 氏
【 略 歴 】
茨城県笠間市(旧岩間町)生まれ。1987年に慶応義塾大学卒業後、森ビル株式会社へ入社。
株式会社ラフォーレ原宿への出向を通し、SC運営・営業に尽力する。
ヴィーナスフォート、表参道ヒルズの館長を経て、2014年に株式会社ラフォーレ原宿の代表取締役社長に就任し、現在、森ビル株式会社の執行役員を兼任している。
趣味はサッカー。2019年東京都大会(50歳以上)で優勝。