SCのDX / OMOを考える

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時代が大きな転換期を迎えている今、SCはどのような未来を目指そうとしているのでしょうか。このシリーズでは、SC業界のキーパーソンのゲストに迎え、その想いやビジョンを伺っていきます。

JR西日本SC開発株式会社 カンパニー統括本部事業戦略室 リーダー 石神孝浩氏(以下、石神氏)と、株式会社イースト SCネットワーク 有吉利夫(以下、有吉)による対談をお届けいたします。

ゲスト: JR西日本SC開発株式会社  石神 孝浩 氏
ファシリテーター:株式会社イースト 有吉 利夫

有吉  この度は、キーパーソン対談にご参加いただきまして誠にありがとうございます。
 早速ですが、まずは石神さんのこれまでのご経歴について教えていただけますか?

石神 氏  平成18年に今のJR西日本SC開発㈱に入社しました。当時の天王寺ステーションビル(今の天王寺ミオ プラザ館)では、フロア担当として「企画や販促など」に携わったのが最初の仕事です。

 平成21年にポイントシステム更新を担当した際、イーストさんとお仕事をさせていただきました。

 昨年までは西日本旅客鉄道㈱に出向し、ショッピングセンターの基幹システム統合プロジェクトに3年強にわたって従事させていただきました。ここでは、グループ39SC約3,000店舗の決済端末更新や、ポイントシステム含むバックエンドのシステム統合を行いました。

 今後、SCがOMOやDXに向かう第一歩といったところでしょうか。

有吉  販促のお仕事に関しても、広告代理店さんと一緒に携わっていた形でしょうか?

石神 氏  特に販促の専任担当というわけではないので経常的な販促には携わっていません。なので、基本的には自分の好きなようにさせていただいていました。思い立ったらまず電話して、とにかく相手の会社に出向いて顔を合わせて話をする、というのが私のスタイルなんです。

有吉  なるほど、石神さんらしさというか、働きやすいように行動していくことが元々のスタイルとしてあったんですね。

 では、今回のメインテーマになりますが、御社におけるDXへの取り組みについてお聞かせください。

システム構築は、マルチベンダーでスピーディーに

石神 氏  ショッピングセンター事業における環境は日々厳しさを増していると感じております。
 人口減少・ICT進展による選択肢の多様化でオフラインとオンラインの境界がなくなってきています。

 また、外に目を向ければ、グループの総合力を活かした戦略を講じている中で、当社としてもグループの総合力を活かした対応が必要不可欠であると認識していました。
 導入前のシステムはベンダーも多種多様であり、各ポイントPGMも全てばらばらの状態であり、また将来を見据え、システム並びに現状のポイントPGMを一元的に管理することが必要でした。

 そこで、昨年グループの持つ39のショッピングセンターに統合的なシステムを構築に動きました。
 具体的にはテナントに貸し出す決済端末から売上管理システムのMallProなどを導入しています。

 グループといいながら弊社の場合は構成会社がバラバラなので、いわば局地戦なのです。
 そのためこれまでは各施設が単体でシステムを導入し、単体で顧客を囲い込むという形でした。

有吉  それは大きな課題でしたね。

石神 氏  ええ。同じグループでありながら、SCの規模や立地によって、導入しているシステムや機能が異なりましたので。

有吉 効率的ではなかったということですね。
 その中で、当社のサービスを採用していただいたのは、どういった部分に期待頂けていたのでしょうか。

石神 氏  イーストさんに期待しているのが、マルチベンダーとしてうまく回るシステムの構築です。

 一つのベンダーでシステムをまるごと構築すると身動きが取りづらくなり、柔軟性が損なわれる為、それでは時代の変化に対応していけません。

  特にフロント部分、つまり“攻め”のシステムとしては、サードパーティーをうまく活用してPoCをしながらスピーディーに進めていく点が御社の強みだと思っていますがいかがでしょうか?

有吉  確かに我々も、PoCで効果検証することで新たな課題を見つけながらサービスの質の向上や、システムの精度を高めていくことが大切だと考えています。

 ただ、PoC自体は協力先が不可欠になります。
 最近では流動的な変化に対応する形で、同じような想いを持たれてご賛同いただける会社様も増えてきました。

 そういった意味でも当社から発進するPoCでの取り組みが増えてきているのは、感謝しかないですね。

真価:お客様に喜んでいただく普遍的価値とは

有吉  私事になりますが、昭和55年前後に入社された諸先輩方にSC業界の基礎を教えていただき、実務に取り組んできました。

 私のような40歳前後の世代に、これから課せられる責任は非常に大きいと感じています。テクノロジーが急速に進化し、SC業界も「テック化」が進むと考えています。

 そこでSCの「真価:諸先輩たちが作ったこの20年のSCの普遍的な価値」と「新価:これからSCに求められる新しい価値」とは何か、真価と新価に対して、進むべき方向性や必要なスピード感を生み出すためには何を変えていく必要があるかといったお話を伺えればと思います。

 まず、石神さんが考えるSCの「真価」をお聞かせください。
 また、今後もSCに求められる普遍的な価値とは、どのようなことでしょうか?

石神 氏  ありきたりな回答かもしれませんが、「リアルの場にお客様を呼び、楽しさ、喜びを感じてもらうこと」が普遍の価値だと思います。

有吉  なるほど。やはりオフラインの重要性をすごく感じる言葉ですね。

石神 氏  もちろんお客様が求めているニーズや悩みごとは時代と共に変わっていきますから、それを敏感にとらえ、対応していくことは重要です。

 しかし、しっかりとお客様がリアルの場に来て喜んでくれているかという点は、今後も変わることのない本質的な価値だと思います。

有吉  たしかに、顧客と深くかかわるSCにとって、価値を考える上で「喜び」はキーワードとして普遍的に感じますね。

 最近はコミュニケーションツールが増えすぎた結果、リアルなコミュニケーションそのものが減ったのではないかと感じています。
 もちろんコロナ禍も理由の一つですが、デベロッパーにとってはテナントと如何にコミュニケーションを取るのかを考えることは、極めて重要と思うのですがいかがでしょうか?

石神 氏 テナントと我々SCの関係も、根本的には変わっていないと思うんですよ。

 コロナ禍の中、テナントの自社ECへの取り組みはかなり強化されているものの、出店していただける価値には変わりはなく、商圏内のお客様の“狩り場”を求めているという点は不変でしょう。

 一方でお客様の課題は時代と共に変わっており、「商品を買いたい」というニーズから「おしゃべりしたい」「コミュニケーションを取りたい」というものに変わっています。
 オンラインで表面的なコミュニケーションは取れているのですが、双方向でもっと深くコミュニケーションしたいと考えているわけで、その場がショッピングセンターなんじゃないのかなという気がしています。

有吉  そういったSCで「お客様とお客様」、「お客様とテナント」といったインタラクティブな双方向のコミュニケーションはすごく大切ですよね。

 また、SCとテナントという関係でもSC側からワンウェイで情報発信するだけでは信頼関係は生まれにくいと思うので、そういう場をどんどん作りたいと考えています。

 

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