WithコロナにおけるSC開発・運営はこう変わる!【前編】

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時代が大きな転換期を迎えている今、SCはどのような未来を目指そうとしているのでしょうか。このシリーズでは、SC業界のキーパーソンをゲストに迎え、その想いやビジョンを伺っていきます。

 今回は、SC業界内で屈指の情報通であり「論客」としても知られる、株式会社西武プロパティーズ 島田隆氏(以下、島田氏)に、「Withコロナ」における「SCビジネスの在り方」について、弊社代表の長島とのロングインタビューを2回に分けてお届けします。

インタビューゲスト:株式会社西武プロパティーズ 島田 氏
インタビュアー:株式会社イースト 長島

長島  はじめに、島田さんのお仕事について簡単にご紹介お願いします。

島田 氏  西武プロパティーズのマーケティング戦略部で、主に弊社の商業施設部門の既存・新規事業のモニタリングとアドバイス業務、同業他社情報の収集とフィードバック、運営管理の業務改善の企画・立案等をしています。弊社の主な運営施設としては西武鉄道沿線の商業施設「ぺぺ」、駅ナカ施設の「エミオ」、リゾート型ショッピングモールの「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」、大規模複合施設の「東京ガーデンテラス紀尾井町」等があります。
 直近の話題としては2020年9月2日に、住友商事グループに開発・PM業務を依頼している、西武新宿・池袋線の所沢駅直結の商業施設「グランエミオ所沢」の2期がオープンしました。

同業他社との情報共有を目的に発足した「SC-net」(※)

長島  SC業界内で島田さんと言うと、やはり「商業施設連絡会」(SC-net)の主催者として有名ですが、そもそも「SC-net」を立ち上げられた経緯 をお伺い出来ますか?

>注(※)本記事で記される「SC-net」はデベロッパー各社によって構成されている任意団体の固有名称で、当サイトの「SC network」とは異なります。

島田 氏  今から20年以上前のバブル崩壊後に、大手・中堅テナントが突然倒産するという事態が頻発しました。
 当時私自身を含め、過去にそこまで数多くのテナントの経営破綻処理や裁判等を経験した者が社内におらず、対応に苦慮しました。その経験から同業他社との情報共有が大切だと気付き、ネットワークをつくろうと思い立ちました。
 それまで業界内では「自社の手の内は明かさない」のが常識でしたが、たまたま他の交流会で一緒になったデベロッパーの知人達に相談した所「それは面白いね」ということになり、それが「SC-net」立ち上げのきっかけとなりました。

     こちらの「キーパーソン対談」に登場された、森ビル株式会社の荒川執行役員は当会の発足時のメンバーであり、事務局も長く勤めていただきました。

長島  当社株式会社イーストが創業当初、島田様はじめ「SC-net」の皆さまに事業紹介の機会の場を頂いたことは今でも忘れません。
 デベロッパー業種以外の企業が、「SC-net」定例会で御話しをさせて頂く機会を頂いたのが初めてと伺った時は、驚きと感謝で一杯でした。
 改めてありがとうございます。

 その「SC-net」が20年以上前から今日に至るまで長く続いている、「原動力」あるいは「秘訣」のようなものはあるのでしょうか?

島田 氏  この会の原動力は事務局メンバーと17社の会員企業、約30社のビジター会員企業の協力あってこそで、私は単なる取りまとめ役です。
 秘訣というほどのものは無いですが、強いて言えば参加者の最も関心のあるテーマを「吟味して提供する」という事に尽きると思います。

 「SC-net」は通常夜の18時半から21時半までみっちり勉強します。あと年に1回は必ず有志を募って国内や海外のSCを視察し、参加者自身の見聞を深める機会を創出しています。

 昨年は台湾に行き、現地で頑張っている施設や、デベロッパーの関係者との交流も深めて来ました。
 ただご承知のように今年はコロナの関係もあり、従来のような80名規模の定例会は開催していません。今は年内中にウェビナーによる開催に向け調整中です。

「SC-net」定例会の1コマ

従来型のビジネスモデルは通用しない


長島  今まさに新型コロナウィルスが社会に大きな影響を及ぼしていますが、Withコロナの時代も含めて、今後のショッピングセンター開発・運営はどのように変わっていくのでしょうか?

島田 氏   今年の5月ぐらいから、同業者や商業コンサルタント、テナントさんからも同じ事をよく聞かれます。
 多くの方が「アフターコロナで大きくビジネスが変わる」的な発言をされていますが、こと商業デベロッパーが抱えている本質的な問題は、実は「コロナ以前から変わっていない」というのが私の認識です。
 むしろ既に5年前から問題の本質は明らかになっていたのに目を背けてきた、というのが本当のところではないでしょうか。

 それが今回の“コロナクライシス”によって顕在化し、もはや誰もが見て見ぬ振りをするわけにはいかなくなったという印象です。

長島   島田さんが言われる「問題」とは、具体的には何でしょう?

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